大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)115号 判決

一 請求原因一ないし同三の事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、原告の主張する取消事由の存否について検討する。

1 成立に争いのない甲第二号証によれば、本件発明の明細書には、「印型11は、シリンダー1の凹部3を除いて箔と用紙を介してシリンダーに接しており、常に左回転しているシリンダー1の凹部以外に接触しているときには右方向に移動し、シリンダー1の凹部3に面したときには左方向に移動するような往復動作をする。」(第二欄一五行~二〇行)と記載されていることが認められ、これによれば、シリンダー1は、箔押用紙保持のための円筒面と、平盤10の戻り行程(左方向に移動する行程)の際印型11からシリンダーが逃げるための凹部3と用紙把持のクリツパー2とからなり、常時一方向回転をしているものであり、審決及び原告はこの部材を「凹部を有する圧胴」と称しているものと解せられる。

2 他方、成立に争いのない乙第一号証(第一引用例)によれば、第一引用例の第一図(別紙第二図面(〔編註〕省略))の符号2は圧胴、10は印刷紙の端部を把持又は開放するグリツパー、15は印刷部材、19は大歯車、20は軸で、ハツチングを施した部分は圧胴を構成する部材の断面を示すものであることが認められる。

そして、右第一引用例には、「図面上で記号1は回転式圧胴2を支承する印刷機の枠を示し、当該圧胴は、大きな車輪18と結合する歯車17により主駆動軸16から、矢印Ⅰで示された方向に連続的に回転する。」(第一頁右欄一一行~一六行)と記載されているが、それには前提として、印刷機の圧胴2にはその回転軸20を介して大歯車19が固定され、大歯車19はさきの大歯車18と常時噛合う機構が当然に施されているものと解せられる。

そして、右図面と明細書の記載によれば、印刷部材15は、圧胴周面の一部を占め、その表面は圧胴2のうちで最大の径を有し、通常大歯車19のピツチ円を含む円筒面に一致し、圧胴2が矢印Ⅰ方向に回転するに伴ない印刷部材15の端部が版盤3の表面に近接し、印刷部材15の表面は印刷紙の裏面を介して版盤3を押圧すると共に版盤3の表面を転動し、この際、両者の間に滑りが生じては印刷ができないから、版盤3も共に矢印Ⅰ方向に移動するものであり、印刷部材15の周方向長さは、仮想圧胴周面の長さのほぼ四分の一を占めており、これは版盤3の移動方向長さと等しいことが認められる。

すなわち、第一引用例のものにおいて圧胴として機能する個所は、印刷部材15の部分のみであつて、その他の周部分は印刷部材15の表面よりも内側に凹んでいるものである。(なお、右第一図(別紙第二図面)には、圧胴2の回転方向と版盤3の移動方向Ⅲとが逆方向に図示されているが、これは版盤3の戻り行程を示しており、この行程において版盤3に対向する圧胴の表面は、その間に間隙をもつから版盤3は圧胴の表面を摩擦することなく、図示のとおり戻り行程を完了することができるものである。)

3 したがつて、本件発明の圧胴と第一引用例のものの圧胴との差異は、用紙・箔を介して印盤を押圧するか、用紙・インキを介して印盤を押圧するかの違いだけであつて、両者は近似する技術的分野に属し、両者の構成及び作用効果に格別の差異はないから、第一引用例の圧胴もまた「凹部を有する圧胴」というに何ら妨げないものというべく、審決の認定に誤りはない。

4 第一引用例に審決認定のその余の記載があること、本件発明と第一引用例のものとの一致点及び相違点が審決認定のとおりであること、第二引用例に審決認定の記載があること並びに審決認定の当然技術(周知事項)については原告において明らかに争わないので、いずれも自白したものと看做される。

5 そうすれば、本件発明は第一引用例及び第二引用例に記載されている技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めるのが相当である。

原告は、第一引用例のものは印刷機であつて箔押機ではないから、かかる引用例から本願発明を容易に発明することができるとするのは誤りであると主張しているが、既述のとおり、用紙・箔を介して印盤を押圧する箔押機と用紙・インキを介して印盤を押圧する印刷機とは、極めて近似する技術的分野に属する事項であるから、その主張は採用できない。

三 よつて、審決の取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却することとする。

〔編註〕 本件における特許発明の要旨は左のとおりである。

平盤状の印型と凹部を有するシリンダー及び供給巻箔のガイドローラーと巻取ローラー並びに用紙供給装置と箔押済みの用紙取出装置からなり、シリンダーは常に一定方向に回転し、平盤状の印型はシリンダーの凹部と面したときに反対方向に移動する往復動をするようにしたことを特徴とする回転箔押機。

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